EST LÀ / KYOTO / 008
UNCHANGED
変えない。

STORY
変えない。
新しいものが次々と生まれる時代では、少し不思議な言葉かもしれません。
京都・麩屋町通。
そこに、松屋常盤という菓子屋があります。
創業は承応年間。
代々、家族の中で菓子づくりを受け継ぎ、現在は十六代目。
つくられているのは、味噌松風。
西京味噌と小麦粉に砂糖を加えて練り、表面に黒胡麻を散らして焼き上げる菓子です。
見た目はとても素朴です。
華やかな飾りがあるわけでもない。
時代に合わせて姿を大きく変えてきたわけでもない。
燃料が炭から電気へ変わった以外は、昔からのつくり方を受け継いでいるといいます。
そして、この味噌松風は御所への菓子調進を担い、明治天皇、昭和天皇にも好まれたと伝えられています。
けれど、EST LÀが気になったのは、
「天皇家御用達」という肩書きだけではありません。
何百年ものあいだ、同じものをつくり続けていること。
変えようと思えば、変えられたはずです。
味も。
形も。
売り方も。
それでも、受け継いできたものを簡単には変えない。
EST LÀ / KYOTO 008では、その時間を店や暖簾の絵として描くのではなく、味噌松風から見える要素だけを残しました。
焼き上がった表面の色。
淡い生地。
黒胡麻。
それを矩形の反復へと変え、傍らに置いたのは、
「十六代」
という言葉。
一枚一枚の矩形は、同じように見えて少しずつ違う。
人が変わっても、時代が変わっても、
同じものが次へ渡されていく。
そしてフロントには、ただ一言。
「変えない。」
変わらないのではなく、
変えない。
その二つは、少し違うと思います。
新しくすることだけが、前へ進むことではない。
残すと決めることも、
受け継ぐことも、
ひとつの意思です。
京都の街には、そんな時間が何気なく残っています。
EST LÀ / KYOTO 008 — UNCHANGED
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